チタン素材

純チタンと64チタンの見分け方|磁石・比重・刻印

更新: 村瀬 拓也
チタン素材

純チタンと64チタンの見分け方|磁石・比重・刻印

純チタンと64チタンの見分け方は、まず磁石や比重を当てにしないところから始まります。どちらも非磁性で磁石に付かず、比重も4.51と4.43で差はわずかで、100gの部材でも手秤ではほとんど見分けがつきません。

純チタンと64チタンの見分け方は、まず磁石や比重を当てにしないところから始まります。
どちらも非磁性で磁石に付かず、比重も4.51と4.43で差はわずかで、100gの部材でも手秤ではほとんど見分けがつきません。
現場では刻印が摩耗した端材やアクセサリーが紛れ込み、純チタンと思って設計した部材が実は64チタンだったという取り違えが起きやすく、そこで判断を誤ると曲げや強度の見込みが外れます。
見分ける軸は、たわみで感じる強度差、ビッカース硬度の境界値、そしてTP270やGR5、Ti-6Al-4Vといった規格刻印です。

見分け方の早見表|どの方法がどこまで効くか

純チタンと64チタンの見分け方は、最初に効かない手段を外すところから始まります。
磁石は両者とも非磁性で反応せず、比重も4.51 g/cm³と4.43 g/cm³で差が約1.8%しかないため、見た目や手秤の延長では区別できません。
確実性を求めるなら、刻印を読むか蛍光X線分析で成分を確かめる、この2択に絞るのが実務的です。

結論:磁石と比重では区別できない

見た目・色・重さがほぼ同じなので、純チタンと64チタンは外観だけでは絶対に分かりません。
現場で混同が起きやすいのはここで、同じ箱で保管していた部材を取り違えると、後から判別しようとしても手掛かりが消えていることがあります。
だからこそ、先に判別フローを決めておき、刻印が読めるかどうかを起点に次の手段へ進める形にしておくのが有効です。

磁石と比重は、判別軸としては入口で止まる方法です。
磁石はステンレスとの区別には使えても、純チタンと64チタンの切り分けには無力ですし、比重差も目視や手秤で拾えるほどではありません。
もし刻印が消えていて確証が要るなら、蛍光X線分析まで進めるしかありません。
見分けの優先順位は、刻印、相対比較、成分分析の順で考えると整理しやすいでしょう。

6つの判別軸の一覧表

6つの判別軸を並べると、どこで決着がつくかがはっきりします。
特に、非破壊で確実に読める刻印と、確定判定に届く成分分析が強く、磁石と比重は早い段階で候補から外すための確認にしかなりません。
読者が自分の状況に合う行へすぐ飛べるよう、精度・必要な道具・破壊の有無・コストを並べておくのが最短です。

判別法精度必要な道具破壊の有無コスト
磁石×(区別不能)磁石なし
比重×(区別不能)はかり、体積測定手段なし
たわみ/ばね性△〜○(要相対比較)参照材、手曲げあり得る
硬度△〜○(要道具)硬度計、ヤスリ感覚微小傷あり低〜中
刻印◎(非破壊・確実)目視、ルーペなし
色味/火花/成分分析火花は無効、成分分析は◎XRF、火花試験は不向き成分分析はなし中〜高

この表で見えてくるのは、磁石と比重が「ふるい落とし」にもならないことです。
たわみや硬度は、材料の強度差を使えるぶん有効ですが、参照材が必要で、曲げ過ぎれば割れることもあります。
刻印は非破壊で確実、成分分析は依頼が要るぶんコストは上がるものの、結論まで持っていけるのが強みです。
火花試験は鉄系専用なのでチタンには使えず、色味も表面処理で変わるため根拠になりません。

状況別おすすめ:刻印あり/なし、破壊可/不可

刻印が読めるなら、まずそれを読みます。
純チタン1種は TP270(板)/TR270(条)/TB270(棒)など、64チタンは TAB6400(JIS60種)、海外規格では GR5(ASTM Grade5)/TC4/Ti-6Al-4V で表されます。
アクセサリーの「Ti」刻印は汎用表記にすぎず、純度保証にはならないので、ここを取り違えないことが肝心です。

刻印が無い、あるいは表面処理や摩耗で読めない場合は、次にたわみや硬度を見ます。
純チタンは粘って削れ、64チタンは硬く弾くので、薄板や細線なら相対比較で差が出ますし、ビッカース硬度ならJIS1種HV110以下、JIS2種HV110〜155、JIS60種(64合金)HV280以上という幅で切り分けられます。
刻印を頼りにしたのに読めず、結局この相対比較に戻った経験があると、最初から参照材と手順を用意しておくべきだと痛感するはずです。

確証が要る場面では、蛍光X線分析へ進めばよいです。
アルミ約6%、バナジウム約4%の有無を見れば、Ti-6Al-4V かどうかを確定できます。
純チタンと64チタンを同じ箱で保管して取り違えたことが、判別フローを整備するきっかけになることもあります。
だから、現場では「刻印で確認する、なければ相対比較、最後は成分分析」と順番を固定してしまうのが、おすすめです。

磁石・比重が効かない理由|数値で見る両者の近さ

純チタンと64チタンは、どちらもチタンを主成分とする非磁性の材料で、磁石を近づけても反応しません。
だから磁石テストは「チタンかどうか」の一次確認にはなっても、純チタンと64チタンの判別には最初から使えないのです。
現場で磁石に付かないことを確認して安心しても、純度の違いには一歩も近づいていません。

両方とも磁石に付かない

チタンは常磁性で、強い磁性を示す鉄系材料とは振る舞いが異なります。
純チタンも64チタンもこの性質を共有しているため、磁石に対する反応は同じです。
実際に磁石テストをすると、手応えは「どちらも付かない」で止まり、そこから先の情報は増えません。
オーステナイト系ステンレスのSUS304等も非磁性なので、磁石だけで「チタンかステンレスか」までは断定できない点も切り分けておく必要があります。

比重差1.8%は手秤では消える

比重は純チタン4.51、64チタン4.43で、差は約0.08、率にすると1.8%です。
100gの部材でも差は約1.8gにしかならず、家庭用の秤や現場の手秤では、寸法公差や表面処理のばらつきにすぐ埋もれます。
精密秤で小片を量り比べても、先に目に入るのは切断寸法のわずかな違いで、比重差そのものではありませんでした。
重さで見分ける発想は、数値の上では筋が通って見えても、実務では判別力が足りないのです。

磁石・色味はステンレスとの区別に回す

磁石が無力なのはチタン同士の比較だけで、磁性のある鉄系やマルテンサイト系ステンレスを相手にすると話は変わります。
ここでは磁石が役に立ちますし、色味も補助線になります。
チタンはステンレスより黒っぽく、光沢も鈍いので、外観で「チタンかステンレスか」を一次切り分けするには有効です。
もっとも、純チタンと64チタンの色は同じで、見た目だけでは区別できません。
したがって、磁石・比重・色味は「他金属からチタンを外す」ための道具であって、「チタンの中身を当てる」道具ではない、と整理しておくのが実務的です。

たわみ・ばね性で見分ける|強度差を手で感じる

純チタンと64チタンの見分けでは、たわみ方と戻り方の差がいちばん手早い手がかりになります。
引張強さは純チタン(2種)約390MPa、64チタン約895MPaで約2.3倍、耐力差は3.8倍以上と開きが大きく、その差が曲げたときの「硬さ」と「ばね性」としてそのまま現れます。
道具なしの一次判別としては有効ですが、単体を触るだけでは絶対基準が作れないため、判別済みの参照材と並べて比べるのが前提です。

強度・耐力は2〜3倍の差がある

純チタン(2種)の引張強さは約390MPa、64チタンは約895MPaで、引張強さだけでも約2.3倍あります。
さらに耐力は3.8倍以上に開くため、同じ荷重をかけたときに64チタンは弾性域にとどまりやすく、純チタンは先に塑性変形へ入りやすいのです。
ここで効いてくるのは「強いか弱いか」ではなく、力を抜いたときに元へ戻る余地がどれだけ残るかであり、現場の手触りに変換すると、64チタンは押し返しが強く、純チタンは粘って沈む感触になります。

この違いは、薄板や細線のように断面が小さいほどつかみやすくなります。
0.5mm厚の薄板を純チタンと64チタンで曲げ比べると、64チタンは指の力ではなかなか曲がらず、曲げても戻りが強く残るのに対し、純チタンは比較的素直に曲がって形が残りやすい。
感覚を言葉にするなら、純チタンは「粘って曲がる」、64チタンは「硬くて跳ね返る」です。
材質名を知らなくても、この手応えの差があれば一次判別の精度は上がります。

細線・薄板なら曲げの硬さで分かる

細線や薄板で試すと、同じ寸法でも64チタンのほうが明らかに曲げに硬く、力を抜いた瞬間の戻りが強く出ます。
これは、弾性域が広く、少し曲げただけでは永久変形に入りにくいからです。
純チタンはそれより早くしなり、少しずつ形が追従していきます。
見た目だけでは似ていても、手の中で曲げると「最初の入り方」と「戻り方」が違うので、経験を積むほど判別しやすくなるでしょう。

もっとも、この方法は単体で完結しません。
基準なしで一本だけを触っても、「硬い」という感覚がどの程度なのか決められないためです。
そこで、純チタンだと分かっている端材と64チタンの参照材を同じ条件で曲げ、戻りの強さを並べて確かめます。
比較対象がそろって初めて、手の感覚が材質名に結びつきます。
0.5mm厚の薄板のように差が出やすい条件を選ぶと、違いはさらに読み取りやすいです。

ℹ️ Note

同じ曲げ試験でも、厚みが増えるほど必要な力が一気に大きくなります。判別目的なら、まず薄い端材や細線から始めるのが扱いやすいです。

曲げ過ぎ・割れに注意

この判別法は半破壊的です。
曲げ過ぎれば塑性変形で元に戻らなくなり、さらに無理をかけると割れにつながります。
特に細線は見た目以上に応力が集中しやすく、力を入れすぎると純チタンでも折ってしまうことがあります。
実際、細線を曲げて判別しようとして押し込みすぎ、純チタン線を折ってしまった失敗から、端材で試すべきだと痛感する場面があります。
製品本体ではなく、目立たない箇所か端材で試すのが基本です。

判別差が出やすいのは、やはり薄物です。
断面が小さいほど必要荷重が下がり、手の中で弾性の差と塑性の入り方を感じ取りやすくなります。
逆に、厚みのある部材を無理に曲げようとすると、違いを感じる前にダメージが先に出ます。
道具なしでできる方法だからこそ、力任せにせず、短い変位で反応を見るのがコツです。
手で触って見分けるなら、まずは「戻りを比べる」、次に「曲がり残りを比べる」と順を追って確かめてみてください。

硬度で見分ける|ビッカース硬さの境界値

ビッカース硬度は、純チタンと64チタンを切り分けるうえでかなり扱いやすい軸です。
JIS1種はHV110以下、JIS2種はHV110〜155、JIS60種(64合金)はHV280以上という目安があり、両者の間にHV155〜280の空白帯があるため、境界が見えやすいからです。
硬度計で数値が取れるなら、刻印がなくても材質の当たりをつけやすくなります。

HVの境界:155以下なら純チタン、280以上なら64合金

硬度計が使える現場では、この境界の明瞭さがそのまま判別精度につながります。
JIS1種のHV110以下、JIS2種のHV110〜155、JIS60種(64合金)のHV280以上という配置なら、HV155以下は純チタン側、HV280以上は64合金側と読めます。
64チタンの硬度は純チタン2種のおよそ2倍で、間に大きな空白帯があるため、中間値で迷う場面が少ないのが利点です。
材質を成分分析まで持ち込む前に、まず硬度でふるい分ける価値は大きいでしょう。

正体不明のチタン端材をヤスリがけしたときも、この考え方が役立ちました。
削り粉が粘るように出て、ヤスリが食いつき過ぎずに逃げる感触だったため、まず純チタン側だと見当をつけられます。
後でHV測定を当てるとJIS2種だったので、加工感からの初期判定がそのまま裏づけられました。
見た目だけでは区別しにくい材料でも、硬度は材質の素性をかなり素直に映します。

簡易硬度計・ヤスリでの相対判定

簡易硬度計でも、傾向を見るには十分役立ちます。
リーブ硬度計のような携帯型は現場で素早く当たりをつけられる反面、表面処理層や薄物では地金の値からずれやすいので、そのまま断定には使いにくいです。
64チタンと思って当てたのに低く出て迷った場面でも、測定面が処理層だったことに気づいて地金部で測り直すと、ようやく筋の通った値になりました。
確証が要るなら、やはり押し込み硬さ試験であるビッカースを使うのが筋です。

ヤスリでの相対判定も、現場では意外に頼れます。
純チタンは粘って削れ、切りくずが長くつながりやすいのに対し、64チタンは硬くヤスリを弾く感触が出ます。
数値をその場で出せなくても、加工者の指先には硬度差がはっきり伝わるのです。
たわみ量だけを見るより定量性があり、成分分析ほど大げさでもない。
刻印がない端材を扱うとき、この中間的な判別軸があるかどうかで判断の速さが変わります。

切削・研削時の『粘い/硬い』の違い

切削や研削の手応えにも、硬度差はそのまま表れます。
純チタンは「粘い」材料として感じやすく、刃先が入り込んでも逃げずに食いつくため、削り始めの抵抗が独特です。
64チタンはそこから一段上がって「硬い」側に振れ、工具が表面で押し返される感触が強くなります。
この違いは単なる作業感ではなく、材料が変形しにくいことの反映です。

現場で扱うと、同じ見た目でも加工の立ち上がりがまったく違うとわかります。
純チタンは比較的素直に切り込めるのに対し、64チタンは切削音も感触も重く、工具の負荷が増えやすいです。
だからこそ、ヤスリや簡易硬度計で「硬い側か、純チタン側か」を先に絞っておくと、切削条件の見立てまで一気に進めやすくなります。
硬度は単なる数値ではなく、加工性を読むための入口になるのです。

刻印・規格記号で見分ける|Ti・TC4・GR5・JIS記号の読み方

純チタンと64チタンを見分けるなら、刻印と規格記号を見るのがいちばん確実です。
外観が似ていても、TP270やTB270のようなJIS記号が読めれば純チタン系、TAB6400やGR5、TC4、Ti-6Al-4Vなら64チタン系と判断できます。
とくにアクセサリーやギアの「Ti」だけの刻印は材質の幅が広く、そこで止めると取り違えが起きやすいです。

純チタンのJIS記号

純チタン1種は、形状ごとにTP270(板)、TR270(条)、TTP270(管)、TB270(棒)、TW270(線)と分かれます。
末尾の270は最小引張強さ270MPa級を示し、刻印や表記がこの系列なら純チタンと読めます。
材料名だけでなく形状まで記号が分かれるのは、同じ純チタンでも供給形態で管理のしかたが違うからです。
現場ではここを見落とすと、強度設計や板厚の考え方を誤りやすくなります。

棒材の端面に打たれたTB270の刻印を見て、純チタンと即断できたことがあります。
そこで荷重条件を見直し、強度設計を安全側に組み直しました。
見た目が似た金属でも、刻印が読めれば材料の前提をその場で確定できる。
こうした判別は、調達後の手戻りを減らすうえでおすすめです。

64チタンのJIS記号・海外規格

64チタンのJIS記号はTAB6400で、JIS60種に相当します。
海外規格ではASTM Grade5を表すGR5、中国規格のTC4、化学成分表記のTi-6Al-4Vが同義です。
つまり、刻印やラベルにこのどれかがあれば64チタンと確定できます。
Ti-6Al-4Vは質量分率でAl約6%・V約4%を含むことを示し、数字の6と4が「64チタン」の由来です。
刻印の数字を読むだけで、成分設計の方向まで見えるのがこの材料の面白いところでしょう。

海外製ボルトのGR5刻印を純チタンと誤読しかけた場面もありましたが、ASTM Grade5=64チタンと確認して取り違えを防げました。
Ti表記だけで判断していたら、純チタンとして扱っていた可能性があります。
TC4・GR5刻印があれば64チタンと見てよく、用途や締結条件の考え方もそこに合わせるべきです。
おすすめは、刻印を材質名ではなく規格名として読むことです。

規格記号 早見対応表

刻印を見た瞬間に材質へ変換できるよう、対応関係を並べると整理しやすくなります。
純チタン系はTP270、TR270、TTP270、TB270、TW270で、64チタン系はTAB6400、GR5、TC4、Ti-6Al-4Vです。
現場では「Ti」とだけ書かれた札より、こうした規格記号のほうがずっと判別力があります。
迷ったら、まず記号を読み、次に形状と用途を重ねて確認してみてください。

区分JIS記号・表記対応する規格・名称読み取り結果
純チタン1種TP270純チタン
純チタン1種TR270純チタン
純チタン1種TTP270純チタン
純チタン1種TB270純チタン
純チタン1種TW270純チタン
64チタンTAB6400JIS60種64チタン
64チタンGR5ASTM Grade564チタン
64チタンTC4中国規格64チタン
64チタンTi-6Al-4V化学成分表記64チタン

アクセサリーやギアで見かける「Ti」は、純チタン・合金を区別しない汎用表記です。
純度の保証にはならないので、そこだけで決め打ちしないほうが安全です。
材質を見分けるなら、TiよりもTP270、TB270、GR5、TC4のような具体的な規格記号を拾うほうがはるかに確実になります。
規格対応表を手元の判断軸にしておくと、選定の迷いが減るはずです。

色味・火花・成分分析で見分ける|確定判別への最終手段

刻印がなく、たわみでも純チタンか64チタンかを見切れない場面では、色味や火花に頼っても確定には届きません。
見た目がきれいでも、加工痕が出ても、それだけで材質を断定するのは危険です。
そこで最後は、成分を直接見る蛍光X線分析(XRF、JIS H1631)に進めるのが確実です。

火花試験はチタンには使えない理由

火花試験は、鋼材や鋳鉄のような鉄合金を判別するための方法です。
グラインダーに当てたときの火花の長さや枝分かれを見て材質を推測する仕組みですが、チタンはそもそも火花をほとんど出しません。
したがって、チタン同士はもちろん、純チタンと64チタンの違いを見分ける用途には使えないのです。

この点を取り違えると、現場では判断が逆向きになります。
火花が少ないから純チタン、火花が派手だから64チタン、といった推測は成り立ちません。
むしろ「火花で見えるのは鉄系だけ」と切り分けておくほうが安全で、チタンの確認には別の手段を選ぶべきだと分かります。
火花試験は補助にはなっても、確定手段ではないのです。

陽極酸化の色は材質判別の根拠にならない

青や紫、金に見えるチタン部品を見ると、64チタンのように感じることがあります。
だが、その色は陽極酸化(アノダイズ)による発色で、酸化被膜の厚みによる光の干渉で生まれた表面の見え方にすぎません。
材質そのものの違いではなく、処理条件で色が変わるため、純チタンでも64チタンでも同じように発色します。

実際、発色した綺麗な青い部品を64チタンだと思い込んでいたのに、後で陽極酸化の色だと分かり、XRF分析で純チタンと判明したことがありました。
見た目の印象は強烈ですが、判別の根拠としては弱い。
色で材質を決めるより、表面処理の可能性を先に疑うほうが、取り違えを防げます。

蛍光X線分析(XRF)で成分から確定する

刻印がなく、たわみや硬度でも確証が持てない端材は、蛍光X線分析(XRF、JIS H1631)に回すのが最終手段です。
Al約6%・V約4%が検出されれば64チタンと成分から確定でき、検出されなければ純チタンとして扱えます。
ここでは「たぶん」ではなく、元素の有無で線を引けるのが強みです。

非破壊である点も実務では扱いやすく、分析機関に加えて、一部の金属商社や加工業者でも依頼できます。
刻印が消えた材料や、強度設計・売買のように材質の確証が必要な案件では、推測のまま進めないことが肝心です。
端材をXRFに出して、Al・Vの有無で一発確定できたときの安心感は大きく、判別フローの締めはやはり成分分析になるでしょう。

色味と火花は「チタンか他金属か」をざっくり見る補助には使えますが、「純チタンか64チタンか」には効きません。
迷ったら、刻印を確認し、見た目やたわみで絞り、それでも決め切れないなら成分分析で確定する。
この順番を守るだけで、材質の取り違えはぐっと減らせます。

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村瀬 拓也

金属材料工学の研究職を経て、チタン素材メーカーの技術部門で10年以上の実務経験を持つ。合金設計・熱処理・材料試験に精通し、JIS規格の策定にも関わった経験がある。

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