チタングレード早見表|Grade 2・5・23とJIS対応
チタングレード早見表|Grade 2・5・23とJIS対応
チタンの図面・仕様表記は、ASTMのGrade番号、JISの種別、UNS番号、製品記号が入り混じり、2026年のいまでも設計者と調達担当者を悩ませています。海外サプライヤーの見積に『Grade 23』、国内図面に『61種』が並んだとき、同一材料かどうかの確認に手間取る場面は少なくありません。
チタンの図面・仕様表記は、ASTMのGrade番号、JISの種別、UNS番号、製品記号が入り混じり、2026年のいまでも設計者と調達担当者を悩ませています。
海外サプライヤーの見積に『Grade 23』、国内図面に『61種』が並んだとき、同一材料かどうかの確認に手間取る場面は少なくありません。
Grade 5はTi-6Al-4V、Grade 23はTi-6Al-4V ELIであり、UNS R56400やR56401まで含めて対応関係を押さえれば、逆引きの迷いは減ります。
さらに、同じGrade 5でも板はB265、棒はB348、管はB338と参照規格が変わるため、グレード名だけでなく製品形状規格までそろえて指定することが手配ミスを防ぐ近道です。
目的別おすすめ早見表:用途からグレードを即決する
Grade 2、Grade 5、Grade 23のどれを選ぶかで迷う場面は多いですが、用途が見えていれば答えはかなり早く出ます。
耐食性と成形性を優先するならGrade 2、強度と軽量化を最優先するならGrade 5、医療インプラントならGrade 23が標準解です。
設計レビューで「なぜそのグレードか」を一枚で示せると、用途要求と材料特性の対応がすぐ伝わりますし、材料商への問い合わせ前に形状や規格まで絞り込めるので段取りも速くなります。
こんな人はこのグレード
まず押さえるべきは、迷ったらGrade 2を標準に置く考え方です。
純チタン2種に当たるGrade 2は、加工性、強度、耐食性のバランスがよく、入手性も高いため、汎用用途の起点として扱いやすい材料です。
耐食・成形重視でも、一般用途でも、初期検討の第一候補として外しにくいのがGrade 2で、ここから要求に応じて上位グレードへ振る流れが実務では自然でしょう。
高強度・軽量を狙うならGrade 5です。
Ti-6Al-4Vのα+β型合金で、Grade 2よりはるかに高い強度を持ちながら、鋼相当の強度をより軽い質量で実現できます。
部材の薄肉化や重量制約が厳しい設計では、この比強度の差がそのまま設計余裕になるのがポイントです。
医療・生体用途はGrade 23が軸になります。
Grade 5のELI版として格子間元素を抑え、破壊靭性と生体適合性を高めているため、整形外科や歯科インプラントで標準的に扱われます。
比較対象はGrade 2、Grade 5、Grade 23の3つを軸にし、純チタン1種・3種・4種は補足として扱う構成にすると、本文の分量と比較の視点がそろいます。
純チタン系は番号が上がるほど酸素・鉄が増えて強度は上がり、延性は下がるため、1種から4種までを横並びで見ると「なぜGrade 2が汎用標準なのか」も理解しやすくなるはずです。
全グレード横断比較表で参照するカラム設計
横断比較は、グレード名、組成、引張強度、特徴、向いている人、対応JIS種別の6列で統一します。
この並びにしておくと、設計者は性能差を見られ、調達担当は規格対応を見られ、材料商への照会でも話が早くなります。
特に「グレード名」と「対応JIS種別」を分けておくと、ASTMのGrade番号、JISの種別、UNS番号、製品記号が混在する現場でも取り違えが減ります。
実務では、見た瞬間に必要情報へたどり着けることが価値になります。
材料レビューの場で1枚の比較表を出し、用途ごとの候補と規格対応を同時に示せれば、「なぜそのグレードか」という問いに対して、特性だけでなく規格面まで含めて即答できるからです。
採用判断の説得力が増すだけでなく、後工程の発注・手配も整えやすくなります。
ℹ️ Note
同じグレードでも製品形状で参照規格は変わります。板・帯はASTM B265、棒・ビレットはB348、配管はB338、医療用は純チタンがF67、Ti-6Al-4V ELIがF136です。図面と手配仕様は「グレード+製品形状規格」をセットで書くのが基本になります。
早見表の使い方:図面表記からの逆引き手順
図面にGrade番号やJIS種別が書かれているなら、まず次章の対応早見表で逆引きします。
たとえばGrade 5ならJIS60種、Grade 23ならJIS61種という対応を押さえておくと、社内の表記ゆれを吸収しやすくなります。
純チタン系もGrade 1から4までがJIS1種から4種へ1対1でつながるため、番号が上がるほど高強度・低延性へ寄る流れを前提に見れば、候補の切り分けが速いです。
用途から選ぶ場合は、最終章の選定フローへ進みましょう。
設計条件が耐食性中心なのか、成形性中心なのか、あるいは比強度や生体適合性が最優先なのかで、見るべき軸が変わるからです。
早見表で当たりをつけ、対応早見表で表記をそろえ、最後に選定フローで確定させる。
この順番にしておくと、調達の見積依頼も「材質、形状、規格」を一発でまとめやすくなります。
チタングレード対応早見表:ASTM GradeとJIS種別の対応
ASTMのGrade番号は、純チタンから合金までの材料区分を示す共通言語であり、JISの「種」や製品記号と突き合わせて初めて、図面と現物の食い違いを減らせます。
純チタンはGrade 1-4、合金系はGrade 5以降という流れで整理すると、調達時の確認もずっと速くなるでしょう。
特に輸入材のミルシートがGrade表記だけだったり、図面と在庫票で呼び方が違ったりする場面では、この対応表が実務の土台になります。
純チタン系(Grade 1-4 / JIS 1-4種)の対応
純チタン系は、Grade 1=JIS1種、Grade 2=JIS2種、Grade 3=JIS3種、Grade 4=JIS4種と1対1で対応します。
いずれも工業用純チタンですが、番号が上がるほど酸素や鉄などの不純物量が増え、強度は高まりやすく、その代わり延性や成形性は下がる方向になります。
たとえば成形最優先ならGrade 1、汎用バランスならGrade 2、強度寄りならGrade 4という見方がしやすく、設計段階で要求性能をどこに置くかを整理する助けになります。
合金系(Grade 5 / JIS60種、Grade 23 / JIS61種)の対応
合金系では、Grade 5(Ti-6Al-4V)がJIS60種、Grade 23(Ti-6Al-4V ELI)がJIS61種に対応します。
UNS番号もあわせて見ると、Grade 2はR50400、Grade 5はR56400、Grade 23はR56401です。
図面にGrade 5、材料商の在庫票に60種とあっても、ここが一致していれば同一材として扱える判断材料になりますし、逆にGrade 23のようにELI材まで含む場合は、強度だけでなく靭性や生体適合性の観点まで読み取る必要が出てきます。
Grade 5はAl6%・V4%・残部Tiのα+β型合金で、純チタンよりはるかに高強度です。
Grade 23はそのELI版で、酸素上限を0.20%から0.13%へ下げ、窒素・鉄・炭素も抑えることで、医療用途で重視される破壊靭性を高めています。
JIS製品記号(TP340等)の読み方
JISは材料の「種」だけでなく、降伏点や引張強度を製品記号で表すため、Grade番号→JIS種別→製品記号の三段で読まないと誤解が起きやすいです。
TP340は引張強度340-510MPa級の板を指す記号で、同じJIS材でも板、棒、管で見え方が変わります。
輸入材の証明書にGrade表記しかなくても、国内の受入基準がJIS種別やTP記号で書かれているなら、両者を対応づけて確認するのが筋です。
海外見積のGrade表記と国内図面のJIS種別が混在する現場では、この早見表を共通言語にしておくと手配ミスを抑えやすくなります。
Grade 2:汎用純チタンの組成・特性・向いている人
Grade 2は工業用純チタンの中でも扱いやすさと耐食性のバランスがよく、化学プラントや熱交換器、建材のように「強度だけ」を追わない用途で軸になりやすい材種です。
ASTMのGrade番号とJIS種別は、Grade 1〜4が純チタン1〜4種、Grade 5が60種、Grade 23が61種に対応し、Grade 2のUNS番号はR50400です。
JISではTP340のように製品記号で降伏点や引張強度を表すため、材質名だけでなく板や管の記号まで見て判断する必要があります。
化学組成と機械的性質
Grade 2は実質的に純チタンで、合金元素は含みません。
化学組成は酸素0.25%以下、鉄0.30%以下などの不純物上限で管理され、純度を保ちながら製造性を確保する設計です。
強化は合金化ではなく、不純物の抑制と加工条件の管理で行うため、材料選定では「何を足すか」より「何を入れないか」が効いてきます。
機械的性質は、引張強度345MPa以上、0.2%耐力275MPa以上、伸び約20%、硬さHRB60-70が目安になります。
純チタンの中では極端に硬くも軟らかくもないバランス型で、成形時の割れにくさと使用時の最低限の強さを両立しやすいのが持ち味です。
薄板の絞り加工では、Grade 2なら割れを抑えて立ち上げやすいのに対し、同じ形状をGrade 5で狙うと硬さと反発が効いて工程が増えやすく、現場では最初の段取りに差が出ます。
メリット(耐食性・成形性・溶接性)とデメリット
Grade 2の強みは、高純度ゆえの優れた耐食性にあります。
海水や薬液に触れる熱交換器で純チタン2種が長期間腐食せず使われているのは、この耐食性が実務で効くからです。
さらにHRBが低いため曲げや絞りの成形がしやすく、溶接もしやすいので、複雑形状の構造物へ展開しやすい材種だと言えます。
加工現場では、板取りと曲げを素直につなげやすい点が扱いやすさにつながります。
ただし、純チタンである以上、合金に比べれば強度は低く、高負荷構造には向きません。
荷重を受ける部位では板厚を増やすか、そもそも合金化した材種へ切り替える判断が必要になります。
Grade 2は「腐食しにくいから万能」ではなく、「耐食・成形・溶接の優先度が高い場面で強い」材料です。
設計段階で荷重条件を詰めれば、無駄な肉盛りを避けながら使えます。
向いている用途と向かない用途
向いている用途は、化学プラント配管、熱交換器、建材、装飾部材のように、強度そのものよりも耐食性、成形性、溶接性が効く分野です。
腐食環境での安定性が必要で、しかも現場加工や溶接で形にしていく用途では、Grade 2の素直さが効きます。
おすすめです。
薄板から筐体やカバーを起こすような仕事でも、工程を増やしすぎずに仕上げやすいでしょう。
向かない用途は、高応力で軽量化が最優先の構造部材です。
航空機のように比強度を強く求める場面では、純チタンよりもTi-6Al-4V系のGrade 5やGrade 23が選ばれます。
Grade 2を使うなら、荷重が集中する箇所に余裕を持たせる設計が前提になります。
おすすめしないのは、強度を材料まかせにしたい場面です。
むしろ、耐食優先でどこまで成形しやすくまとめるかを考えると、Grade 2の使いどころが見えてきます。
Grade 5(Ti-6Al-4V):高強度合金の組成・特性・向いている人
Grade 5(Ti-6Al-4V)は、アルミニウム6%・バナジウム4%・残部チタンからなるα+β型合金で、流通量が最も多いチタン合金です。
『64チタン』とも呼ばれ、JIS60種に対応します。
ASTM Grade 1〜4が純チタン1〜4種、Grade 23がJIS61種であるのに対し、Grade 5は高強度側の標準材として位置づけられます。
JISではTP340のように製品記号で降伏点・引張強度を表すため、規格名と材料名を切り分けて読むことが欠かせません。
化学組成(Ti-6Al-4V)と機械的性質
Ti-6Al-4Vは、6%のアルミニウムでα相を強め、4%のバナジウムでβ相を安定化させることで、純チタンより高い強度を引き出す設計です。
だからこそ、同じチタン系でもGrade 2のような「加工しやすい純チタン」とは役割が違います。
実務では、荷重を受けるのに軽さも欲しい場面で選ばれやすく、構造設計の余地を広げる材料だと考えると分かりやすいでしょう。
機械的性質は、引張強度895MPa以上、0.2%耐力828MPa以上、伸び約10%、硬さHRB95-100です。
Grade 2の約2.6倍の強度を持つため、断面をむやみに増やさずに荷重へ耐えやすくなります。
鋼材と比べても、必要な強度をかなり軽い質量で確保しやすい点が核心です。
| ASTM Grade | JIS種別 | 呼称 | UNS番号 |
|---|---|---|---|
| Grade 1 | 1種 | 純チタン | 非公表 |
| Grade 2 | 2種 | 純チタン | R50400 |
| Grade 3 | 3種 | 純チタン | 非公表 |
| Grade 4 | 4種 | 純チタン | 非公表 |
| Grade 5 | 60種 | Ti-6Al-4V | R56400 |
| Grade 23 | 61種 | Ti-6Al-4V ELI | R56401 |
JISの製品記号は材料そのものの呼び名ではなく、板・棒・管などの製品条件を含む表記です。TP340のような記号を見たときは、材質名と製品形状を分けて読むと混乱しにくくなります。
メリット(高強度・高比強度・疲労強度)とデメリット
Grade 5の最大の魅力は、鋼相当の強度を鋼の約60%の重量で実現できる高い比強度にあります。
重量を抑えたい構造部品で鋼設計から置き換えると、同じ安全率を保ちながら質量を落としやすく、実際の設計変更でもこの差が効いてきます。
疲労強度にも優れるため、繰り返し荷重を受ける部位では寿命設計の面でも扱いやすく、高温強度がGrade 2より高い点も見逃せません。
ただし、反応性が高いので切削や溶接には特殊技術と設備が必要です。
純チタンよりも加工の癖が強く、曲げ加工に向く材料ではありません。
成形性・延性はGrade 2に劣るため、大きな塑性変形を前提にした部品では無理が出やすく、材料費も高いので、性能が必要な場所へ絞って使うのが基本になります。
旋削で切削速度を上げると、工具摩耗と発熱が急に増えます。
現場では、純チタンより低速で、潤滑を重視した条件管理へ寄せるのが定石です。
ここを外すと工具寿命が一気に縮むため、加工性の読み違いがコストへ直結します。
向いている用途と向かない用途
向いているのは、航空宇宙の構造部材、高負荷で軽量化が要る機械部品、スポーツ・自動車の高性能部品です。
強度が必要でも重さを増やしたくない場面では、Grade 5の比強度がそのまま設計自由度になります。
鋼から置き換えたときに、肉厚を抑えつつ必要強度を確保できるので、回転体や締結部、負荷の大きいブラケットのような部位で効果が出やすいでしょう。
逆に、大きな塑性変形を伴う成形品には向きません。
曲げや深絞りのように材料を大きく動かす工程では、延性の余裕が少ないことが制約になります。
熱処理や加工条件を詰めれば使える場面は広がりますが、Grade 2の延長線で考えると失敗しやすい材料です。
性能を取りにいくならおすすめですが、成形自由度を優先するなら別の選択肢を検討してみてください。
Grade 23(Ti-6Al-4V ELI):医療グレードの組成・特性・向いている人
Grade 23(Ti-6Al-4V ELI)は、医療用途でTi-6Al-4Vをより厳密に管理した派生グレードで、ELIはExtra Low Interstitial、つまり極低格子間元素を意味します。
Grade 5をベースに、酸素・窒素・炭素・鉄のような侵入型元素や不純物を抑えた設計で、強度を少し譲る代わりに破壊靭性と延性を引き上げるのが狙いです。
とくに体内埋植や低温環境では、この「わずかな成分差」が寿命や信頼性に直結します。
ELI(不純物極低)とは何か
ELIは、単に「きれいな材料」という意味ではありません。
Ti-6Al-4Vの母材組成は保ちながら、格子のすき間に入りやすい元素を徹底して低減し、割れにくさと変形のしなやかさを優先したグレードだと考えると分かりやすいでしょう。
実務では、同じTi-6Al-4Vでも医療案件になるとGrade 5ではなくGrade 23を指定され、不純物管理とトレーサビリティまで求められる場面がある。
材料そのものだけでなく、製造履歴まで含めて信頼性を作る発想です。
酸素上限はGrade 5の0.20%からGrade 23の0.13%へ下がります。
差は0.07ポイントにすぎませんが、チタン合金ではこの程度でも破壊靭性と延性の改善がはっきり効きます。
酸素は強度を押し上げる半面、塑性変形を妨げやすい元素ですから、低酸素化は「少し弱くして、かなり粘り強くする」調整になります。
Grade 5との差
Grade 5はUNS R56400、Grade 23はUNS R56401で、どちらもTi-6Al-4V系ですが、呼び分けの意味は明確です。
Grade 5は一般機械部材で扱いやすい強度重視の標準材、Grade 23はその中でも靭性と清浄度を優先した医療向けの位置づけになります。
JISではGrade 5がJIS60種、Grade 23がJIS61種に対応し、Grade 1〜4は純チタン1〜4種です。
対応関係を整理すると、材料選定の迷いが減ります。
| ASTM Grade | 呼称 | UNS番号 | JIS対応 | 主な位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| Grade 1 | 純チタン | 非該当 | 1種 | 最も軟らかく成形性重視 |
| Grade 2 | 純チタン | R50400 | 2種 | 汎用の純チタン |
| Grade 3 | 純チタン | 非該当 | 3種 | 強度を少し上げた純チタン |
| Grade 4 | 純チタン | 非該当 | 4種 | 純チタン系で高強度寄り |
| Grade 5 | Ti-6Al-4V | R56400 | 60種 | 汎用の高強度合金 |
| Grade 23 | Ti-6Al-4V ELI | R56401 | 61種 | 医療向けの高靭性合金 |
JISでは降伏点や引張強度を製品記号で表すため、たとえばTP340は引張強度340〜510MPa級の板を意味します。
つまり、ASTMのグレード名だけではなく、JISの製品記号まで見ておくと、板・棒・線材の選定ミスを避けやすくなります。
医療・低温用途での選定基準
Grade 23が選ばれる理由は、低温や繰返し荷重で割れにくいことにあります。
人工関節や外科器具では、静的な強さだけでなく、衝撃や疲労に対する余裕が要る。
さらに、体内埋植では高い生体適合性が求められるため、清浄度の高いTi-6Al-4V ELIが相性のよい材料になります。
外科インプラント用は専用規格ASTM F136で管理される点も押さえておきたいところです。
ただし、Grade 23は万能ではありません。
Grade 5よりわずかに強度が低く、不純物管理が厳しいぶんコストも上がるため、汎用構造にまで広げると過剰品質になりやすい。
だからこそ、整形外科・歯科インプラント、人工関節、外科器具、低温機器、圧力容器のように、靭性と信頼性が効く用途でおすすめです。
材質選定では「高強度か高靭性か」を曖昧にせず、要求される破壊モードから詰めていきましょう。
製品形状で変わる規格番号:板・棒・管・線の使い分け
同じチタン合金のグレードでも、板、棒、管、線では参照する規格番号が変わります。
グレード名だけで手配すると、寸法公差や試験項目、受入証明書の見方までずれてしまうため、図面には形状規格まで含めて書くのが基本です。
たとえば板ならASTM B265、棒とビレットならASTM B348、配管や継目無管ならASTM B338を軸に考えます。
JISでも板はH4600系、工業用チタン材の基本規格としてH4600は板・棒・線・継目無管を含む体系で押さえておくと、調達の食い違いを減らせます。
板・帯
板・帯・薄板はASTM B265で規定され、設計図面では「グレード」と「板材の規格」を切り分けて書く必要があります。
JISではH4600系の板材として整理されるため、同じグレードでも板としての厚み方向の管理、表面状態、寸法公差の考え方が変わります。
ここを曖昧にすると、材料名は合っていても加工基準が合わないという事態になりやすいのです。
実務で多いのは、棒材を手配するのにB265を書いてしまうケースです。
サプライヤーからすると、B265は板の規格なので、断面が丸棒なのか角材なのか、必要な試験や寸法管理が何なのか判断できません。
素材の呼び名が同じでも、板と棒では検査票の読み替えが必要になるため、最初から形状規格を明示しておくほうが早いでしょう。
棒・ビレット・管
棒・ビレットはASTM B348、配管・継目無管はASTM B338で規定されます。
ここで見落としやすいのは、形状が違えば同じグレードでも寸法公差の取り方と試験項目が変わることです。
棒は直進性や径の管理が問題になり、管は肉厚、偏肉、内外径の管理が効いてきます。
製品形状ごとに要求が分かれるので、材料証明書の数字だけを見て安心するのは危険です。
JISでもH4600が工業用チタン材の基本規格として板・棒・線・継目無管を含みますが、実際の手配では「どの形状の、どの規格で受けるか」を書き分けるほうが明快です。
調達票にグレードだけを書いてしまうと、候補材が広がりすぎて見積の比較軸がぶれます。
逆に、グレード+製品形状規格をセットにすると、受入時の照合も一気にやりやすくなります。
医療用規格(F67 / F136)と図面指定の注意
医療案件は一般工業用とは別系統で考えるべきです。
純チタンの外科インプラント用はASTM F67、Ti-6Al-4V ELIはASTM F136で、同じチタンでも要求の出どころが違います。
たとえば一般工業材の感覚で見積してしまうと、受入で医療用の証明条件に合わず差し戻されることがあります。
グレードが合っているだけでは足りず、医療規格まで含めて初めて図面指定として成立するわけです。
図面や手配仕様は、『グレード+製品形状規格+必要なら医療規格』の三点セットで書くのが最も安全です。
受入検査では、証明書の規格番号と形状、必要な場合はF67かF136までを突き合わせて確認します。
規格の組み合わせがずれていないかを最初に固定しておけば、調達、加工、検査の三者で同じ材料を見られるようになります。
選定フロー:耐食性・強度・加工性・コストで決める
Grade 5は、アルミニウム6%・バナジウム4%・残部チタンからなるα+β型合金で、引張強度895MPa以上、0.2%耐力828MPa以上、伸び約10%、HRB95-100という硬さを持ちます。
Grade 2の約2.6倍まで強度を引き上げながら、鋼並みの強度を鋼の約60%の重量で実現できるため、比強度が際立つグレードです。
もっとも、反応性が高く加工・溶接に特殊技術が必要なので、万能材としてではなく、高負荷構造部材や航空宇宙のように性能要求が明確な場面で選ぶのが筋でしょう。
6つの判断軸
チタンの選定は、耐食性、強度・比強度、成形加工性、溶接性、コスト、生体適合性の6つで整理すると見通しがよくなります。
どれを優先するかは用途で変わり、耐食だけを見れば純チタンで足りる場面もありますし、荷重や軽量化が絡めば合金化が必要になります。
要求性能を3つに絞ると候補は自然に2グレードまで収束し、迷いが減ります。
用途別の選定ロジック
まず標準解はGrade 2です。
耐食、成形、溶接、コストのバランスがよく、入手性も高いので、汎用部材の第一候補にしやすいのです。
深絞りなど成形加工が主体なら最も軟質なGrade 1、強度を少し上げたいが合金化までは不要ならGrade 3・4、本格的な高強度・軽量化が必要ならGrade 5を選びます。
要求が耐食性だけなのにGrade 5を指定すると、材料費だけでなく加工工数まで膨らみます。
実務ではこの過剰仕様が起こりやすく、まずは「何に耐える必要があるのか」を言語化するのが近道です。
ℹ️ Note
体内埋植や生体接触があるなら、Grade 23(ELI)とF136を指定する流れになります。靭性と生体適合性が必要な領域では、Grade 5ではなくGrade 23が標準です。価格はGrade 2 < Grade 5 < Grade 23の傾向があるので、過剰品質を避けて要求性能に対して最小限のグレードを選ぶのがコスト最適になります。
調達時のチェックリスト
調達では、グレード名だけでなく形状規格、証明書、トレーサビリティまで確認しておきましょう。
同じGrade 5でも、板・棒・鍛造材で要求される管理は変わりますし、材料証明が追えなければ後工程で仕様照合が止まります。
迷ったときは、必要性能の優先順位を3つに絞り、候補をGrade 2とGrade 5、必要ならGrade 23のどれかに落とし込んでみてください。
金属材料工学の研究職を経て、チタン素材メーカーの技術部門で10年以上の実務経験を持つ。合金設計・熱処理・材料試験に精通し、JIS規格の策定にも関わった経験がある。
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