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耐食チタンGrade 7・12|化学プラント配管の選定基準

更新: 村瀬 拓也
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耐食チタンGrade 7・12|化学プラント配管の選定基準

耐食チタン合金の選定は、純チタン(Grade 2)の限界を正しく押さえるところから始まります。Grade 2は酸化性環境では安定ですが、希塩酸や希硫酸のような還元性酸の低pH域では不働態皮膜が崩れ、化学プラント配管では全面腐食や高温塩化物中の隙間腐食を招きます。

耐食チタン合金の選定は、純チタン(Grade 2)の限界を正しく押さえるところから始まります。
Grade 2は酸化性環境では安定ですが、希塩酸や希硫酸のような還元性酸の低pH域では不働態皮膜が崩れ、化学プラント配管では全面腐食や高温塩化物中の隙間腐食を招きます。
その弱点を最も強く補うのがGrade 7で、0.12〜0.25%のパラジウム添加により、機械的特性をほぼ保ったまま還元性酸や局部腐食への耐性を大きく高めます。
Grade 12はMoとNiを加えたPdフリーの近α合金で、300系ステンレス相当の強度と高温ブラインへの強さを持ちますが、pH 3未満の還元性酸ではGrade 7に及びません。
現場では、純チタンの見積りが通った後に希塩酸ラインの腐食懸念が出て、Grade 7まで上げるか、Grade 12でコストを抑えるかで板挟みになることが少なくありません。
そこで本記事では、Pdが価格を押し上げる理由まで含めて、Grade 16/17やGrade 26も視野に入れながら、どの環境でどのグレードを選ぶべきかを配管設計の順序に沿って整理します。

用途・環境別 耐食チタングレード早見表

純チタン(Grade 2)を起点に選定を始めると、まず見るべきなのは「どの腐食環境か」です。
酸が酸化性か還元性か、最高使用温度、最低pH、塩化物濃度の4点を数値で棚卸しすると、Grade 2で足りるのか、Grade 7やGrade 12へ格上げするのかが早く切り分けられます。
海水や酸化性環境ではGrade 2が素直に候補になりますが、還元性酸、高温塩化物、隙間条件が入ると分岐は急に厳しくなるため、最初の見立てを外さないことが設計の出発点です。

酸の種類(酸化性/還元性)で最初に分岐する

純チタンの不働態皮膜は酸化性環境ではよく働きますが、希塩酸や希硫酸のような還元性酸では維持しにくく、全面腐食の懸念が前面に出ます。
実務では、純チタンで配管設計を進めていたのに、ラインの一部に希硫酸の希釈工程が入った時点で格上げを再検討する、という手戻りが典型です。
ここで効くのは「酸の名前」ではなく、酸化還元の性格です。
希塩酸・希硫酸のように低pHで還元的に振れる系は、Grade 7のようにパラジウムで不働態を支える方向が合っています。
Grade 7が高価なら、リーンPdのGrade 16やRu系のGrade 26で費用対効果を詰める流れになります。

温度・pH・塩化物濃度で純チタンの限界を超えるか判定する

Grade 2は一般腐食や海水用途で広く使われますが、3グレードの中では隙間腐食耐性が最も低いのが弱点です。
高温塩化物ではこの差がはっきり表れ、フランジ、ガスケット部、溶接まわりのような隙間構造で局部的に条件が悪化すると、母材が同じでも先に傷む部位が出ます。
海水熱交換器で本体はGrade 2で問題なかったのに、塩化物が濃縮するブライン側だけ隙間腐食が出た、というのはまさにその例です。
pHが下がり、温度が上がり、塩化物が濃くなるほど限界は近づくため、同一設備でも部位ごとに環境を分けて見る設計視点が欠かせません。

こんな配管にはこのグレード(3〜5パターン早見表)

環境タイプ代表的な薬液/条件推奨グレード選ぶ理由コスト感
海水・酸化性環境海水、酸素を含む中性水系Grade 2一般腐食に強く、海水用途で実績が多い
還元性酸ケース希塩酸、希硫酸、低pHの非酸化性酸Grade 7Pdで不働態を支え、全面腐食と隙間腐食を抑えやすい
高温塩化物ケース高温ブライン、塩化物濃縮部、熱交換器の熱端Grade 12Mo 0.2〜0.4%・Ni 0.6〜0.9%で高温塩化物に強く、強度も取りやすい
隙間腐食ケースフランジ、ガスケット部、溶接継手、孔内部Grade 7局部的に還元的になる隙間で安定しやすい
コスト優先ケースGrade 7相当の耐食が欲しいが費用を抑えたい場合Grade 16/26Grade 7よりコストを詰めやすく、耐食マージンの調整に使いやすい中〜高

Grade 12はPdを使わずに高温ブラインへ寄せられるため、コストを抑えつつ強度も取りやすいのが利点です。
ただしpH 3未満の還元性酸ではGrade 7に劣るので、酸種が混じる工程では選定を急がず、還元性酸・高温塩化物・隙間条件のどれに当たるかを先に確定しましょう。
詳細な原理と比較は後続セクションで深掘りします。
最初に環境を数値で並べてみてください。
そこから格上げの要否が見えてきます。

パラジウム添加が耐食性を高める仕組み

Grade 7は、純チタンの弱点である還元性酸と隙間内部の局部酸性化に対して、パラジウムの働きで不働態皮膜を保ちやすくした合金です。
母材の強みである軽さや成形性を大きく変えずに、希塩酸や希硫酸のような条件で起きやすい全面腐食を抑えられるところに価値があります。
実務では、純チタン配管で腐食が出た希塩酸ラインをGrade 7へ切り替えた途端に挙動が落ち着くことがあり、その理由を電気化学の言葉で説明できると設計判断の納得感が変わります。

純チタンの不働態皮膜が還元性酸で破れる理由

純チタンの耐食性は、表面にできる酸化チタン主体の不働態皮膜に支えられています。
酸化性環境ではこの膜が傷んでも再生しやすく、表面は保護されたままですが、希塩酸や希硫酸のような非酸化性酸では事情が変わります。
低pHで酸素も乏しい条件では皮膜の自己修復が追いつかず、表面が活性化して全面腐食へ傾きます。

この性質を理解しておくと、純チタンが「万能に見えて実は酸を選ぶ材料」だと分かります。
見た目は同じ配管でも、還元性酸のラインでは皮膜を保つ余裕がなくなるため、設計段階でGrade 2を前提にすると危うい場面があるのです。

パラジウムがカソード反応を助けて電位を不働態域へ引き上げる

Grade 7は、Grade 2に0.12〜0.25%のパラジウムを加えた合金です。
パラジウムはカソード反応、つまり還元反応を進める触媒として働き、表面で起こる電気化学反応を滑らかにします。
その結果、合金の電位が不働態域へ引き上がり、還元性酸の中でも酸化皮膜が保たれやすくなります。

ここでのポイントは、Pdが膜を直接「塗って守る」のではなく、膜が安定に存在できる電位条件を整えることです。
だからこそ、酸が還元的であるほどPdの効果が目立ちます。
希塩酸ラインでGrade 7に替えると腐食が止まる、という現場で繰り返し知られた挙動も、この原理で説明できます。

ℹ️ Note

Pd系の発想はGrade 7だけではありません。ルテニウムを使うGrade 26/13や、Ni・Moを使うGrade 12も、狙いは不働態皮膜の安定化と局部腐食の抑制です。元素の選び方は違っても、弱点を補う考え方は共通です。

活性化した隙間・孔内でもPdが腐食を止める

隙間腐食は、フランジやガスケット下のような閉じた場所で内部の電解液がpH 2未満まで酸性に濃縮されることで進みます。
外側から見ると穏やかな環境でも、隙間の奥では酸と金属イオンがたまり、局部的にいちばん厳しい条件ができあがります。
純チタンはこの酸性化に弱く、孔食や隙間腐食が起きるかどうかの判断も難しい材料です。

Grade 7では、まさにその隙間内部の還元的な条件下でPdが働き、再不働態化を促します。
活性化した孔や隙間ほど内部は還元的になりやすく、そこでPdが安定に機能するため、腐食が進み続けにくいのです。
隙間構造のある部位にGrade 7を選ぶ判断は、この原理を知っているだけで随分と論理的になります。

局部腐食は「起きるか起きないか」が読みにくいからこそ、条件が還元的になるほどPdが効くという見方が役立ちます。
弱点である低pH・低酸素環境を逆手に取って耐食性へつなげるのが、Pd添加の本質です。

Grade 7(Ti-0.15Pd)の組成・特性・規格

Grade 7(Ti-0.15Pd)は、Grade 2を母材に0.12〜0.25%のパラジウムを加えた耐食チタンで、機械的特性は母材のGrade 2とほぼ同等です。
つまり、強度設計の考え方は純チタン2種を踏襲しながら、耐食性だけを引き上げた材料として扱えます。
還元性酸や塩化物環境、隙間腐食が問題になる配管・継手・バルブ・熱交換器で選ばれやすいのは、この性格がはっきりしているからです。

化学組成と母材グレードの関係(Grade 11との違い)

Grade 7の本質は、Pd添加量を最小限に抑えながら、耐食性の底上げを狙っている点にあります。
母材がGrade 2なので、ベースの強度水準や設計の考え方が読みやすく、純チタンで進めた肉厚計算や荷重評価を大きく崩さずに材質だけを格上げしやすいわけです。
しかも、Pdは耐食性の改善に効くため、希HClや希H2SO4のような還元性酸や、塩化物を含む酸性液での局部腐食に対して有利に働きます。

兄弟グレードのGrade 11は、Grade 1を母材にしたPd添加材です。
Grade 1はより延性が高く、薄板で複雑な成形を要する用途に向きます。
これに対して、配管や板材、継手のような一般部材ではGrade 7が標準的に使われる場面が多く、母材グレードの違いがそのまま使い分けの勘所になります。
薄板の成形性を優先するならGrade 11、設計の流れを崩さず耐食性を上げたいならGrade 7、という整理になるでしょう。

機械的特性と溶接性・成形性

Grade 7は「耐食性だけを足した材料」と見られがちですが、実務上の扱いやすさはむしろそこで際立ちます。
機械的特性がGrade 2と同等であれば、設計者は母材変更による強度の再評価に追われにくく、既存の純チタン設計をベースにしながら材質選定だけを見直せます。
現場ではこの差が小さくありません。
耐食性の要求が上がった時、強度計算や板厚の再構築に手間を掛けずに済むからです。

溶接性と成形性についても、Pd添加は不利ばかりではありません。
耐食性を維持したまま溶接構造に使いやすく、配管や容器のように継ぎ目が多い構造でも性能を落としにくいのが利点です。
ただし、Pdはコストを押し上げる要因であり、要求環境に対して過剰スペックになっていないかは常に見ておくべきです。
性能が高い材料ほど、使いどころを外すと経済性が崩れます。

対応規格(ASTM B265・ASME SB-265・JIS H 4600)

規格面では、Grade 7の板材はASTM B265、ASME SB-265、MIL-T-9046で規定されます。
調達の現場では、こうした規格番号を明記することで、材質・形状・受入条件の解釈を揃えやすくなります。
管材はASTM B337/B338系で別管理になるため、板と管を同じ感覚で指定しないことが肝心です。
用途が似ていても、規格の立て付けは同じではありません。

JIS体系では、Grade 7はJIS H 4600系の耐食チタン、12種相当に対応します。
ここを押さえておくと、国内仕様書での置き換えや相当材の整理がしやすくなります。
設計、調達、加工の三者で材質名だけを共有するのではなく、ASTM B265やASME SB-265、JIS H 4600系のように規格番号まで揃えておくことが、後工程の齟齬を減らす近道です。

Grade 12(Ti-0.3Mo-0.8Ni)の組成・特性・規格

Grade 12(Ti-0.3Mo-0.8Ni)は、純チタンのGrade 2を母材にしながら、Pd 0.12〜0.25%のような貴金属を使わずにMoとNiで耐食性と強度を底上げした近α合金です。
UNS R53400として整理され、Grade 7の系統を参照しつつ、より実用的なコスト感で高強度・耐食性を狙える位置づけになります。
純チタンでは肉厚が増えやすい高圧配管や熱交換器に対して、薄肉化と軽量化を両立しやすい点が評価されます。

Mo・Niが効く仕組みと近α組織

Grade 12の設計思想は、Grade 2相当の母材にMo 0.2〜0.4%とNi 0.6〜0.9%を加え、酸化皮膜の安定性と還元性環境への抵抗を補うところにあります。
近α組織のまま強度を引き上げるため、純チタンの延性を残しつつ、300系ステンレス鋼に近い強度域へ寄せやすいのが特徴です。
加工や溶接でも、過度に硬くなりすぎないため、設計側は耐食だけでなく成形性や施工性も含めて扱いやすくなります。

高温塩化物・ブラインでの強みと弱点(低pH)

高温ブラインや濃縮塩水では、Grade 12は隙間腐食を抑えやすく、熱交換器のように止まり部や重ね部が生じる設備で効きます。
純チタンでは不安が残る高圧の塩化物ラインでも、300系ステンレス相当の強度を使って薄肉化できるため、圧力損失や重量の面で設計の自由度が上がります。
もっとも、pH 3未満の還元性酸溶液では注意が必要で、酸洗工程のような低pH条件が混じるならGrade 12だけで押し切らず、Grade 7の適性も並べて検討するのが筋です。

圧力容器・熱交換器での適用範囲と規格

用途は熱交換器、圧力容器、塩素設備、塩蒸発装置、臭素ストリッパーが中心で、塩化亜鉛や塩酸蒸気を扱う設備にも向きます。
媒質が弱還元性であったり、酸化性と還元性の間を行き来したりする系では、耐食と強度の両立がそのまま設備寿命に効きます。
規格面ではASTM B265、ASME SB-265、MIL-T-9046の板材規定があり、JIS H 4600系では耐食チタン12種相当として整理されます。
ASME圧力容器規格ではSection VIII Division 1/2およびSection XIIに適用でき、最高使用温度は約600°F(約315℃)が目安です。

ℹ️ Note

圧力容器設計では、Section I・IIIには使えない制約を前提に、適用区分を外さないことが出発点になります。

加工性と溶接性は、Grade 2を母材にした延長線上で考えると理解しやすいです。
Grade 7はGrade 2にPdを加えた合金で、機械的特性はGrade 2と同等に保ちながら耐食性を上げますが、Grade 12はそこにMoとNiを使って、コストと性能のバランスを別の方向で取った材料です。
現場では、溶接後の変色管理や異物混入を抑えれば、熱交換器や配管の連続施工でも扱いやすく、設計段階で薄肉化の見込みを立てやすいでしょう。

Grade 2 / Grade 7 / Grade 12 を横並び比較

Grade 2、Grade 7、Grade 12を並べて見ると、違いは「何に強いか」がはっきり分かれます。
還元性酸に寄せるならGrade 7、高温塩化物や隙間腐食、さらに強度も欲しいならGrade 12、コスト優先で穏やかな条件に使うならGrade 2という整理がしやすいです。
平均条件だけで決めると、海水系でもブライン側や隙間部で想定外の腐食を拾うため、選定は最悪条件で組み立てる必要があります。

比較表(耐還元性酸・耐隙間腐食・強度・温度・コスト・用途の6軸)

グレード耐還元性酸耐隙間腐食(高温塩化物)強度温度上限相対コスト向いている用途
Grade 2低い穏やかな耐食用途、コスト重視の配管や機器
Grade 7高い高いGrade 2相当希HClや希H2SO4を含む還元性酸環境、耐食優先部位
Grade 12中〜高高い高い高め高温ブライン、塩化物環境、強度も要る配管

この6軸でそろえて比較すると、読者は「酸に振るのか」「塩化物と温度に振るのか」「機械強度を優先するのか」を先に決められます。
海水だからGrade 2で足りる、という平均条件の発想だけでは、濃縮したブライン側やすきま内部で腐食が先に進む見落としが起きやすいです。
比較表は、そうした最悪条件を先に炙り出すための道具として使うのがよいでしょう。

還元性酸が主役ならGrade 7、高温塩化物+強度ならGrade 12

Grade 7はGrade 2相当の母材にPd 0.12〜0.25%を加えた合金で、機械的特性はGrade 2と同等です。
組成の差は小さく見えても、パラジウムが還元性酸中での安定性を押し上げるため、希HClや希H2SO4のような環境ではGrade 7がGrade 2より有利になります。
板材はASTM B265 / ASME SB-265 / MIL-T-9046で規定され、JIS H 4600系の耐食チタン12種相当に対応するため、規格面でも位置づけが明確です。
加工性や溶接性はGrade 2系の感覚で扱いやすく、耐食特化の置き換え先として理解すると選びやすいです。

ただし、塩化物が高温になると話は変わります。
Grade 7とGrade 12はGrade 2より高温塩化物や隙間腐食に強く、Grade 12はそこに高い強度が加わるため、温度・塩化物・機械強度が同時に乗る配管では第一候補になりやすいです。
Grade 7は耐食に寄せた材料、Grade 12は耐食と強度の両立に寄せた材料、と役割を分けて考えると整理しやすいでしょう。
おすすめです。

判断を誤りやすいケース(pH変動・酸化剤共存)

選定で見落としやすいのは、運転中の平均pHではなく、CIP洗浄・酸洗・濃縮で一時的に低pHへ振れる工程です。
通常は弱還元性でも、その瞬間に還元性酸が主役になるなら、Grade 2を選んだ時点で余裕がなくなります。
さらに酸化剤が共存すると、還元性酸だけを見ていた判断が崩れるため、常時の状態と最悪条件を分けて見ましょう。

Grade 7とGrade 12で迷う典型は、高温と塩化物があり、ときどき低pHになる複合環境です。
還元性酸の強さと頻度が主役ならGrade 7、主に高温塩化物と強度ならGrade 12という切り分けが実務的です。
現場では「平均で大丈夫そう」に引っ張られがちですが、隙間部やブライン側だけ先に傷むなら、その判断は外れです。
おすすめの考え方は、平均ではなく最悪条件を起点にグレードを選ぶことです。
してみてください。

コストを抑える選択肢:リーンPd・ルテニウム系

Grade 7は優れた耐食性を持ちますが、コスト面ではパラジウム量が効いてきます。
Pdは金より高価になることもあり、0.12〜0.25%という少量でもグレード間の価格差を生む主因になります。
最悪条件に対してGrade 7が過剰なら、貴金属添加量を抑えた中間グレードへ段階的に落とす設計が、調達と性能の両立に向きます。

リーンPd(Grade 16/17)で十分なケース

リーンPdグレードの代表は、Grade 16(母材Grade 2+Pd 0.04〜0.08%)とGrade 17(母材Grade 1+Pd 0.04〜0.08%)です。
どちらもGrade 7よりPdを薄くした設計で、過酷な還元性酸や高温塩化物環境まで要求しない用途なら、必要な耐食性を保ちながら材料費を抑えやすくなります。
Grade 16はGrade 7の低Pd版として考えるとわかりやすく、まずここで成立するかを確認するのが合理的です。

実務では、Grade 7で見積もった段階で予算超過になり、実際の最低pHと最高温度を詰め直すとGrade 16で十分だった、という場面が少なくありません。
ポイントは、平均条件ではなく最悪条件で見ることです。
耐食マージンに余裕があるなら、Pdを減らした中間グレードへ寄せるだけで、性能を落とさずコストを整えやすいでしょう。

ルテニウム置換(Grade 26/13)によるコスト最適化

Pd価格が上がった局面では、Ru系への切り替えが有効です。
Grade 26は母材Grade 2にRu 0.08〜0.14%を添加したグレードで、Pd系の代替として使いやすい構成です。
チタン-Ru二元系合金は、チタン-Pd合金を費用対効果良く置き換えられる選択肢として扱え、局部腐食耐性を保ちながら貴金属コストを分散できます。

Grade 13も同じくRu系として比較対象に入ります。
Pd系に依存し続けると、貴金属市況の変動がそのまま調達リスクになりますが、Ru系を候補に入れておくと材料選定の自由度が増します。
価格だけでなく、同等の局部腐食耐性を別の貴金属で確保できることが、設計と調達の両面で効いてきます。

貴金属添加量を落とす際の腐食マージンの考え方

置き換えの判断軸は、要求される耐食マージンです。
最低pH、最高温度、塩化物濃度の組み合わせでGrade 7が過剰なら、Grade 16やGrade 26へ一段落とす余地があります。
逆に、強い還元性酸に常時さらされるなら、フルPdのGrade 7を維持したほうが安全です。
段階設計で考えるのが筋でしょう。

ただし、貴金属添加量を落とすときは、運転条件の変動幅とエラーマージンを必ず見ます。
平均条件では成立しても、低pHスパイクや高温スパイクが入ると局部腐食リスクは跳ね上がります。
安全側の運転データを基準に選び、無理に下げない判断も選択肢に入れてみてください。
コスト最適化は、余裕の削減ではなく、使い切らない耐食性を見極める作業だと考えるとです。

化学プラント配管での選定フローと留意点

化学プラント配管の選定は、材料名だけを先に決めると外しやすく、まず腐食環境を数値で棚卸しするところから始めるのが筋です。
酸の種類が酸化性か還元性か、濃度、最高使用温度、最低pH、塩化物濃度を並べ、純チタンのGrade 2が最悪条件で持ちこたえるかを先に判定します。
ここで入口を誤ると、後工程でグレードを上げても設計起因の腐食は残りやすいので、環境→構造→規格の順で詰めていきましょう。

Step1:腐食環境を数値で棚卸しする(酸種・温度・pH・塩化物)

選定の第一歩は、配管が触れる液を「酸の名前」で覚えるのではなく、酸化性/還元性、濃度、最高使用温度、最低pH、塩化物濃度まで落として一覧化することです。
純チタンのGrade 2は多くの環境で扱いやすい材質ですが、還元性が強い条件や塩化物が重なる条件では、見た目の耐食余裕だけで決めると危うくなります。
最悪条件で判定するのは、実運転で温度が上がる瞬間や洗浄液が流れ込む瞬間に、局部腐食が先に始まりやすいからです。
設計者はこの段階で「材料を上げる」前に「環境の切り分け」を終えておくと、後戻りが少なくなります。

Step2:隙間構造・溶接部のリスクを設計で減らす

次に見るべきは、材質より先に構造です。
フランジ、ガスケット、差込み溶接、パッキン下のように隙間が生じる部位は、流体更新が滞って局所的に腐食が進みやすく、Grade 7に格上げしても隙間そのものが残れば弱点は消えません。
実務では、材質を上げたのにフランジの隙間設計が甘く、結局は隙間腐食が残ることがあります。
だからこそ、突合せ溶接の採用や隙間の排除で、グレード選定と設計の両輪をそろえる発想が要ります。

溶接部も見落とせません。
Grade 7はPd添加により溶接部でも耐食性を保ちやすい材質ですが、シールドガス管理が甘かったり、酸化色を放置したりすると、母材より先に溶接部が腐食しやすくなります。
配管は「材質が良いから安心」ではなく、溶接条件と後処理まで含めて性能を発揮させる設備だと捉えるべきでしょう。
現場では、溶接条件を整えたうえで、どの部位が隙間になりうるかを図面段階で潰していく流れがおすすめです。

Step3:規格・肉厚・認証で発注仕様を確定する

仕様を固める段階では、規格番号と適用区分を仕様書に明記しておきます。
板材はASTM B265/ASME SB-265、管材はASTM B337/B338系で材質と寸法を指定し、圧力部材はASME適用区分と温度上限まで合わせて書き込むと、調達側で意図と違う材質や肉厚が入る事故を防ぎやすくなります。
Grade 12のようにASME Section VIII Div1/2の区分を確認すべき材質は、ここを曖昧にすると設計成立性そのものが崩れます。
認証、寸法、公差、肉厚を一つの仕様に束ねておけば、見積比較もぶれにくくなります。

配管の選定フローは、環境棚卸しから始めて純チタンの適用可否を判定し、還元性酸主体ならGrade 7、高温塩化物と強度を優先するならGrade 12へ進み、必要に応じてリーンPd系やRu系のコストを精査し、最後に隙間と溶接の設計を詰めて規格で固定する一本道で整理すると扱いやすいです。
おすすめは、材料カタログを眺める前にこの順番で表を作ることです。
そうしておくと、読者自身の配管条件にもそのまま当てはめやすくなります。
試してみてください。

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村瀬 拓也

金属材料工学の研究職を経て、チタン素材メーカーの技術部門で10年以上の実務経験を持つ。合金設計・熱処理・材料試験に精通し、JIS規格の策定にも関わった経験がある。

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